正直な建築

2017.2 柳本 重明

私の気に入っているキリンビールのラジオCMでイギリスのことわざを引用しCMを創っている。 
そのことわざはと言うと、一日幸せで居たいなら床屋に行け、一週間幸せで居たいなら車を買え、一ヶ月幸せで居たいなら結婚しろ、一年幸せで居たいなら家を買え、一生幸せで居たいなら正直であれと紹介している。
医の分野での正直がどう言うことか解らないが、食の分野の正直とはこのホームページにいろいろでてきます。
住の分野建築は、食と同様あるいはそれ以上に正直と嘘が蔓延っているように思います。
正直な素材とは、木・土・石が自然素材の代表的なものとなるが、人工素材でも鉄・アルミ・コンクリート・レンガ・ガラス・タイル・瓦・合板・ビニルなど、人が創り出す正直な素材である思います。
しかし、人工素材も高価な付加価値を持たせようとし、高級な木目・石目調などのプリントやシート・吹付けなどの仕上を加えるで、本来の素材の質感を隠した嘘の材料となります。 
例えば同価格で節だらけの無垢の床板フローリングとメーカー品の高級な木目のシート貼フローリングを比較すると見た目の高級感は後者の方が見栄えするように思われています。 
ハウスメーカーや建売などは高級感を重視する為、メーカー品のフローリングを選択しています。
しかし、長期間使う建築は年月と共に歴然と差が現れてきます。 
無垢のフローリングは経年変化により光沢が現れ傷や変色もいい味・深みとなり美しくなりますが、シート貼フローリングなどは竣工時が一番綺麗で経年変化と共に汚れやくすみ・捲れが目立ちみすぼらしく変化していきます。 
例えば、小学生が写生で古い町並みや長屋などを描いたりしますが、それは木・土・石・瓦・ガラスなどの正直な素材を使い、決して綺麗ではなく汚れているが本物で美しいと感じとり描いているとおもいます。
しかし新築の正直な素材ではない新建材など使用している家や町並みは汚れはなく綺麗だが正直でない為、美しく感じとれず描こうとしていません。
食も住も、たとえ安価なものでも正直である事が、本物の条件であると言えるのではないでしょうか。 
私自身も正直な設計で一年の幸せではなく、一生の幸せを感じていただけるような家を創りたいと考えています。

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